アニメーターズツールズdwarf編・第3弾は、人形を糸で支えるための器具「吊り具」についてです。
吊り具
ボビンの先から繰り出した糸を人形に取り付け、上から吊るための道具です。
人形が宙に浮くアニメーションの時や、歩きなど不安定な態勢になるアニメの時に使われます。
キザギザの棒(ラック)とギアで高さの調節ができることは、タンクと共通していますが、先端に糸を繰り出すボビンをつけた円盤がついています。
糸で人形をつる場合、三点で人形を支えると安定するので、ボビンは三つついています。
ボビンに付いているツマミを緩めると、ボビンがよく回り糸を繰り出しやすくなります。アニメーション中はツマミを締め、糸が余分に繰り出されないようにします。
コの字状の金具をアルミ棒やたる木に引っかけて使います。
アジャスターで幅も調整できます。
セッティング例
センチュリーなどで固定した左右2本の角棒(垂木・アルミ角棒が使われます)に、もう一本角棒をかけ、そこに吊り具をひっかけます。
ボビンから出した糸で人形を支え、
ラックで上下動、本体を滑らせて左右移動、角棒を滑らせて手前・奥の移動を行います。
この吊り具も、職人さんの手作りです。
ドワーフの発注で小前隆さんに作っていただいたものだそうです。
この吊り具の特長は、ラック部分がステンレス製であること。ふつうは真鍮で作ることが多いですが、ステンレス製のラックは真鍮製よりも丈夫で精度が高いのが良いそうです。
ラック以外の他の部品はほぼ真鍮製で、クロムメッキをかけてあります。
大きさも60cmほどと、大きいので上下動のストロークが大きく取れます。
ラックの先端に付いた金具を回転させて、
ボビン付き円盤を吊り下げる位置を調節することができます。
円盤の中心が垂木の下にくるようにすると、重心をとれて安定します。
この金属の円盤状の構造は、本体を回転させるための機構です。
両サイドのツマミを緩めると回転し、
極端な話、これくらい垂木が斜めになっていても、水平に設置することができるのです。
吊り具が欲しい!そんな時は
吊り具も一般的には売られていないので自作するしかありません。
フィルム撮影からデジタル撮影に移行して、合成で突きだしの消しこみができるようになってから、吊りの使用頻度は以前に比べて少なくなったそうです。
しかし、突き出しで支えきれない重さの人形を支えるときや、
突き出しを入れられないセッティングの時には重宝するので、持っていたい道具ではあります。