アイルランドの自然と戦争、男女の悲しい恋の物語。コマ撮りによる美しいミュージックビデオです。概要欄の歌詞(日本語訳あり)と合わせて、ぜひご覧下さい。
レビュー
いかがでしょうか。
壮大な音楽、美しい自然描写、悲しくも神秘的なストーリー…
そしてなにより
顔が良い!
と思いませんか。
ここからは完全に私の好みの話になるのですが、以前から武田さんの作品は人形の顔の造形が素晴らしいと思っていて、時にハッとするほどリアルな表情を見せてくれます。
横顔の時のスッと通った鼻筋がいい。女の子の顔もかわいい。
瞳の中にハイライトが入るとさらに生き生きして見えて良い。ハイライトが緑がかって見える時もありますよね。どういう構造なんでしょう?
その儚げでどこか憂いを秘めた造作は、「ドッグ」や「ピーターと狼」などのスージー・テンプルトン監督の人形に通じるものがあると思って見ています(私感です)
ストーリー解説
ストーリーはミュージシャンのshumileさん(Exotic Dimensions)が、曲を制作していく中で浮かんだ物語を原案に構成されています。
始めにshumileさんから一連の流れを提案してもらい
それを原案として、話し合いを通して映像にまとめていったそうです。
タイトルの「A Maiden Made Not of Clay」は直訳すると「粘土で作られていない乙女」。
聖書では、人間は粘土で作られたとされるため、「同じ人間とは思えないほど素晴らしい」という意味が込められているそうです。
メイキング
モデリング→表情のバリエーションをつけて3Dプリント→顔パーツに磁石を仕込む→塗装、レジンで目玉制作、シリコンで手足を複製、骨組みはワイヤーアーマチュア(ヒューズ線)→ミシンや布用ボンドで衣服の制作#AMaidenMadeNotofClay#ExoticDimensions#stopmotion #コマ撮り #zbrush pic.twitter.com/tNlgy0noAx
— kohei takeda (@khi_tkd) July 5, 2022
顔は3Dプリンターでモデリングしたものを磁石で置き換えているのですね。リプレイスメントと言ってLAIKAなどでも使われている手法です。口を開いた時の唇から口内にかけての造形が立体的で綺麗だなぁと思いました。髪の生え際のあたりから丸ごと置き換えることで、顔にパーツの分割線が入らないようにしているのですね!
兵士の顔も置き換えできるように磁石で脱着可能になってます。
武器や甲冑は資料本などを参考に、創作を交えつつ時代設定から大きく外れないように。鎖帷子は鎖に見えるような質感のある布を使用してます。#AMaidenMadeNotofClay#ExoticDimensions#stopmotion #コマ撮り pic.twitter.com/7BnAm9lhMw— kohei takeda (@khi_tkd) July 5, 2022
アイルランドの時代考証には原案のshumileさんにも多大な協力をしていただいたそうです。
全編を通して野外が舞台なので、部屋の一角に組んだ180×90cmのステージ上で、いかに広がりのある空間を作るかを考えながらセッティングします。#AMaidenMadeNotofClay#ExoticDimensions#stopmotion #コマ撮り pic.twitter.com/K6l9QLZvQP
— kohei takeda (@khi_tkd) July 6, 2022
小道具
⑴岩、スタイロフォームを削ってドライブラシで着色
⑵落ち葉、レーザー加工機で切り出し、寄り用の大きい落ち葉には葉脈を描く
⑶炎、クリアレジンで3Dプリント、クリアカラーで塗装#AMaidenMadeNotofClay#ExoticDimensions#stopmotion #コマ撮り pic.twitter.com/yD6icpAWcs— kohei takeda (@khi_tkd) July 6, 2022
置き換え素材は3Dプリンター、レーザー加工機など普段お仕事でも使われている技術を駆使して造形されています。
みうらさんには、ほかに武器や防具の塗装や崖、城壁の制作などで協力いただきました。画像のハープ、城の塗装も。 pic.twitter.com/jHtzN0Ftzc
— kohei takeda (@khi_tkd) July 6, 2022
初期のテスト動画 pic.twitter.com/rdNyo41dUB
— kohei takeda (@khi_tkd) July 6, 2022
戦争のシーンでは、スケールの小さい人形を使っていたのですね。
同じデザインでスケール違いの人形を作るのはとても手間がかかりますが、ここでも3Dプリンターの利点を活かしていますね!
作者について
スタジオビンゴ社員の武田浩平さんの作品です。
この作品は武田さんの個人制作で、仕事が終わった後やお休みの日にコツコツと作っていたそうです。
スタジオビンゴのインタビューでは大学院修了時の作品や、コマ撮りを始めたきっかけなどについても語られています。
2019年の作品「Screw’s Diving!」