作品レビュー 2022年7月12日

A Maiden Made Not of Clay

アイルランドの自然と戦争、男女の悲しい恋の物語。コマ撮りによる美しいミュージックビデオです。概要欄の歌詞(日本語訳あり)と合わせて、ぜひご覧下さい。

レビュー

いかがでしょうか。
壮大な音楽、美しい自然描写、悲しくも神秘的なストーリー…

そしてなにより

顔が良い!
と思いませんか。
ここからは完全に私の好みの話になるのですが、以前から武田さんの作品は人形の顔の造形が素晴らしいと思っていて、時にハッとするほどリアルな表情を見せてくれます。

横顔の時のスッと通った鼻筋がいい。女の子の顔もかわいい。
瞳の中にハイライトが入るとさらに生き生きして見えて良い。ハイライトが緑がかって見える時もありますよね。どういう構造なんでしょう?

象徴的で一番美しいなと思うカット。肌の白さが際立つ!

その儚げでどこか憂いを秘めた造作は、「ドッグ」や「ピーターと狼」などのスージー・テンプルトン監督の人形に通じるものがあると思って見ています(私感です)

ストーリー解説

ストーリーはミュージシャンのshumileさん(Exotic Dimensions)が、曲を制作していく中で浮かんだ物語を原案に構成されています。
始めにshumileさんから一連の流れを提案してもらい
それを原案として、話し合いを通して映像にまとめていったそうです。

タイトルの「A Maiden Made Not of Clay」は直訳すると「粘土で作られていない乙女」。
聖書では、人間は粘土で作られたとされるため、「
同じ人間とは思えないほど素晴らしい」という意味が込められているそうです。

メイキング


顔は3Dプリンターでモデリングしたものを磁石で置き換えているのですね。リプレイスメントと言ってLAIKAなどでも使われている手法です。口を開いた時の唇から口内にかけての造形が立体的で綺麗だなぁと思いました。髪の生え際のあたりから丸ごと置き換えることで、顔にパーツの分割線が入らないようにしているのですね!


アイルランドの時代考証には原案のshumileさんにも多大な協力をしていただいたそうです。

置き換え素材は3Dプリンター、レーザー加工機など普段お仕事でも使われている技術を駆使して造形されています。

 

戦争のシーンでは、スケールの小さい人形を使っていたのですね。
同じデザインでスケール違いの人形を作るのはとても手間がかかりますが、ここでも3Dプリンターの利点を活かしていますね!

作者について

スタジオビンゴ社員の武田浩平さんの作品です。
この作品は武田さんの個人制作で、仕事が終わった後やお休みの日にコツコツと作っていたそうです。

スタジオビンゴのインタビューでは大学院修了時の作品や、コマ撮りを始めたきっかけなどについても語られています。

2019年の作品「Screw’s Diving!

武田浩平さんのHP


ABOUTこの記事をかいた人

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アニメーター・セット/人形造形
コマ撮りアニメーターをやっています。動かすのが好き。
セットや小道具、人形も作ります。
ドラゴンについての解説を書いてますが、まだわからないことも多いので
こういう使い方もあるよ!等あったら、ぜひメールください。
お仕事はこちらから→ yasuko.a.85@gmail.com
Facebook:yasuko.abe.16