コマ撮り道具 2024年6月26日

たのしい接着剤

コマ撮りの仕事でよく使う接着剤をまとめてみました。
あくまで個人の好みと見解です。というか単に接着剤が好きなので語りたいだけです。
長年同じものを愛用しちゃっているので「こんな接着剤もあるよ」とかおすすめ教えてもらえると喜びます!

瞬間接着剤のなかま

造形界のエース。その名の通りすぐにくっついてくれるところが魅力。空気中の水分と結合することでくっつく。
アロンアルファ(コニシ)やロックタイト、セメダイン、3Mなどいろんなメーカーから出ている。用途や容器の形など様々あってどれを選ぶか迷うから、デパコスの美容部員みたいに各メーカーの社員さんが売り場にいて紹介してくれたら楽しいのになって思う。


瞬間接着剤 低粘度タイプ
粘度が低い(サラサラ)なので狭い隙間に少量流し込むだけでくっつく。プラスチックの接着が十八番だが、プラを溶かしたり色が変わってしまうので貼り直しができない。一発勝負専門。
硬化後は強固だが、硬さゆえに案外脆い(衝撃や引っ張りに弱い)ところがあるので信用しすぎてはいけない。人形のコアなどの特に強度が必要な部分は任せられないガラスのエース。


瞬間接着剤 ジェル状
普通の瞬間接着材はサラサラしていて、木材に使うと染み込んでしまい上手く接着できないがジェル状瞬着なら染み込まない。最初に考えた人えらい。
バルサ材などの木材で小道具をサクサク作りたい時に重宝する。硬化後の強度は液状タイプと同じくらい。


瞬間接着剤 小分けタイプ
本当はアルミ袋に入っているいい瞬着を使いたいけど、高い…しかも使いきれないうちに劣化してしまう…もったいない…
そんなときには少量使い切り瞬着が便利。メーカーを選ばなければ100均でも売っている。

アルテコ スプレープライマー
瞬間接着剤の硬化をさらに早めてくれる魔法のようなスプレー。ただ、かなり独特の臭いがする。スタジオの片隅で使っただけで、鼻がいい人なら「あ、誰かアルテコ使ったな」と気づくほど。しかしその強烈な臭いがクセになる人もいるという魔性の存在。もちろん体によくはないので積極的に吸い込んではいけない。必ず換気しよう。

 

エポキシ系接着剤のなかま

2液を同量混ぜると化学変化で硬化する接着剤。自然乾燥ではないので、空気に触れないところに使っても硬化時間を守れば中までしっかり固まってくれる。
人によって「2液」「エポキシ」「ABボンド」など様々な愛称で呼ばれる。

クイック5
金属、革、木材、プラスチックどんな素材にも対応できる頼れる存在。混ぜて5分くらいしたら固まり始めるのでクイック5。
この「5分くらい」には幅があり、部屋の温度が高いと早くなったり、一度に混ぜる量が少ないとなかなか硬化が始まらなかったりする。そんな気分屋な一面にふりまわされるけど、分量さえ守っていれば最後にはちゃんと硬化してくれる、根は真面目なタイプ。そんなところも魅力。
実用強度に達するには15分〜30分かかるので焦らず待つことも大切。

硬化すると黄色みがかった半透明で、弾性がある。この弾性が大事で、衝撃や引っ張りに耐えてくれる。人形のコアと針金をくっ付けるのに使ったり、人形の関わる家具などの小道具等、強度が必要な時に使う。
ただ強固にくっついてくれるからこそ、一度つけてしまうと外すのは容易ではない。どうしても外したい時ははんだごてで焼き溶かすという力技がある。(必ず換気しよう)

兄弟分にクイック30硬化開始まで30分。ゆっくり作業したいときに)、
ハイスピードエポ(効果開始まで2分程度。すごく急いでいるときに)なんてのもいる。


クイックメンダー
クイック5と同じ2液混合。色は不透明な灰色。硬化前はクイック5よりもったりとして、硬化後はクイック5よりやや硬くなる気がする。硬化後は耐水性がある。
石やコンクリート、木材など表面がザラザラデコボコのものでも、隙間に充填するように塗ることでガッチリくっつけられる。
反対に金属などのツルツルとした面とは相性が悪く、硬化後にあっけなくパリッと剥がれてしまうことがあるので注意。
パワープレイが得意だがどこか抜けている、戦士タイプのイメージ。

メタルロック
金属をハンダ付けしたように強固にくっつけられる。色は黒っぽい半透明。ハンダ付けができないアルミ線の接着に重宝する。使い方はエポキシ系と一緒だが正確にはエポキシではないらしい。
個人的にまだお付き合いが浅いので、硬化時間が長くかかる時があったり、逆に思ったよりすぐ固まってしまったり特性をつかめてない。使ったあとちゃんと口を拭かずにしばらく放置していると心の扉(キャップ)を閉ざしてしまう厄介な一面も持つ。無口な仕事人タイプ。

 

Gボンドのなかま


ボンド G17
Gボンド系の中で最もポピュラーなG17だが、硬化後も濃い黄色が目立つため、意外に活躍する場面は少ない。硬化後は強力かつ柔軟性があるため、コマ撮り用のセットを作る際に、床の下地になるベニヤ板とコルクボードを貼り付けるために使われることがある。
使い方は、両面に薄く塗り広げ、乾いてから張り合わせて圧着するのが基本。

コマ撮りと関係ないけど、靴底が剥がれた時に「こいつがいてくれてよかった」って思う。普段目立たないけどやる時はやる、縁の下の力持ちタイプ。

ボンド Gクリアー
人形作りの大本命。硬化後もしなやかに曲がり、クリアで目立ちにくいので人形の服作りによく使われる。
布や金属との相性がよく、スカートの裾に銅線を仕込んで折り込みたい時とかこの人以外は考えられない、ってくらいお世話になってる。
速乾性で、厚塗りしなければすぐに乾くのも大きな魅力。ただしすっごく糸を引くので扱いが難しいのが難点。綺麗な薔薇には棘がある。

ボンド GPクリアー
Gクリアーと似た使い心地だけど、こちらは発泡スチロールを溶かさない。発泡スチロールやスタイロフォーム(カネライトフォーム)をくっつけたい時に活躍する。

スチのり
成分やメーカーなどGボンドとは違うけど、GPクリアーと似た使い心地。
こちらも発泡スチロールを溶かさない。発泡スチロールを大量に使いたい時や、スチレンボードを組んでセットを作りたい時とかに使う。ボトル状で立てられるのが良い。が、フタが緩みやすいので雑に道具箱とかに入れておくと、こぼれて大惨事になることがある。必ず立てて保存しよう。

ボンド 布用クリアー
透明ボンド。同じような容器に入った透明な接着剤が何種類か出ているが、彼らとどういう関係があるか不明。使った感じは似ているので親戚だという噂もある。
Gクリアーと違って糸を引かないのが最大の魅力だが、接着力では劣る。

クリアファイルの上にちょちょっと絞り出して乾かすと人形の涙などのクリアパーツ作りが簡単にできたり、本来の用途ではないところでも使われる。

他人とは思えない。

水性接着剤のなかま


木工用ボンド
おそらく誰もが使ったことのある、もっとも身近な接着剤。硬化前は白色だが乾くと半透明。
布、紙、木材など色々な場面で使えるが、基本は貼りたい面の両面に薄く塗り広げ、乾いてから張り合わせて圧着するのが正解。Gボンドに比べると乾くのが遅いものの、嫌な臭いが少なく、手についても簡単に取れるなど扱いやすいところが魅力。
自然乾燥なので厚塗りすると中まで乾かせず、硬化不良で剥がれてくることがある。また水に弱いので、濡れる場所には使ってはいけない。

アクリル絵の具に混ぜるとひび割れの防止になるとか、本来の用途ではないところでも重宝している。いつもそばにいてくれる優しい幼馴染タイプ。

裁ほう上手
布用ボンドとしてすごく使いやすいらしいと聞いて買って試してみたものの、いきなり分厚いフェルトの接着やら、化繊のズボンの裾上げやらに使って全然うまくいかず仲違いしてそれきりになってしまった。いつかやり直したいと思っている。上手に使える人、教えてください。

 

貼ってはがせる接着剤

トンボ ピットマルチ2
人形のまぶたや目を貼るのによく使われるので「目のり」とも言われる。エクセルタック先輩がいなくなった今、コマ撮り業界では大変重宝されている。
薄く塗って乾かすとやや黄色みがかった透明になる。乾かしても完全には硬化せず、粘性があるので貼って剥がせるシール状になる。
ただし、完全に乾かす前に貼り付けてしまうと強く張り付いて剥がしづらくなったり、跡が残ってしまうことがあるので注意。

ペーパーボンド
ピットのりと使い心地は似ているが、名前の通り紙の接着が得意。ピットのりは水性なので大量に使うと紙が湿気を吸ってシワになることがあるけど、ペーパーボンドは紙がシワになりにくい。

 

シリコンに使える接着剤

セメダインPPX
今までつかなかったものが強力に接着!との触れ込み通り、シリコンやポリエチレン・ポリプロピレンにも使える瞬間接着剤。この「満を持して」感のあるキャッチコピーに好感が持てる。開発大変だったんだろうな。

手足がシリコン製の人形の場合、人形に小道具を持たせたい時なんかはこの人がいないと成り立たない。接着したいシリコンにプライマーを塗り、もう片方に接着剤をつけて圧着する。硬化速度は普通の瞬間接着剤と同じくらい。シリコンについた瞬着はアセトンで取り除くことができる。が、やっぱり多少跡は残るので気をつけて使いたい。

セメダインBBX
接着力の少ない、貼って剥がせる粘着剤。シリコンにも使えるため人形の手指に付けて使う。PPXと違い完全に硬化しないので、小道具を後で取り外したい場合に重宝する。
誤って自分の指につくととんでもないほどねばつく。ほんとにいつまでもねばねばする。優秀だがちょっと癖のある天才肌タイプ。

 

その他

グルーガン
ホットボンドとも呼ばれる。熱でグルーを溶かし、冷めると固まるため、冬場なんかはとても速乾。100円ショップなどで簡単に手に入る。
溶剤を使っていないので素材に染み込まない。木材、羊毛、段ボールなどと相性がいい。繊細な作業より、ざっくりと手早く作業したい時に向いている。糸を引くが、硬化した後に飛び出た糸は手で簡単にちぎれる。電源を入れたまま下向きにしているとグルーが垂れてきがちなのはご愛嬌。一緒にいるとおおらかな気持ちになれる。血液型はたぶんO型。

一度接着した部分も、グルーガンの先を当てて溶かせばまた取り外せるのも魅力。
金属やアクリルなどの表面がツルリとした平面との接着なら、無水エタノールで簡単に取ることができる。
ただし、「ツルリとした面からはとても剥がれやすい」ということでもあるのでそこは注意が必要。

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いかがだったでしょうか。ここまで読んでくれた方いるんでしょうか。いたらありがとうございます。接着剤好きだけど詳しくはないので、いつも同じものを使っているばかりに愛着がすごいことになってしまいました。

「私はこれ使ってるよ」「俺の推しが入ってない!」などみなさんのご意見もらえると嬉しいです。語ろう、接着剤。


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アニメーター・セット/人形造形
コマ撮りアニメーターをやっています。動かすのが好き。
セットや小道具、人形も作ります。
ドラゴンについての解説を書いてますが、まだわからないことも多いので
こういう使い方もあるよ!等あったら、ぜひメールください。
お仕事はこちらから→ yasuko.a.85@gmail.com
Facebook:yasuko.abe.16