ロシア語の「こんにちは」という意味のタイトル。ロシア語を話すおじさんと一緒に街を歩くストーリーなのですが、おじさんがシュールなのか不思議なのかなんとも言えない、面白くてパワフルな作品の紹介です。
ズドラーストヴィチェ!
実在の知らないおじさん
作者の幸 洋子(ゆき ようこ)さんと僕はグループ展『ANIME SAKKA ZAKKA anthology』で一緒になったことがありまして、いろいろとお話を聞きました。
この作品の一番びっくりなポイントは実話だということ!!ほんとうに幸さんが会ったおじさんを作品にしているのです。いわばドキュメンタリー!ノンフィクションだからなのか、ただのシュールな話ではない力強さと絶妙なおかしみを感じますね。
この作品は東京藝術大学の修了作品。幸さんは作品が思いつかず、街でいろんな人に声をかけて知らない人の話を聞いていたそうです。そこで会ったのがロシア語を話すおじさん。そのおじさんに付いて行った実体験を元にしているのです。
作品が思いつかないからって、街に出て知らない人に声をかけたり、知らないおじさんに付いていく行動力がすごいですよね。作家としてのパワーを感じました。
ちなみに作中のおじさんの声は声優さん。さすがに本人ではなかった。
メイキング
マルチプレーンのコマ撮りです。
紙やビニールや絵の具などいろいろな素材がまざったコマ撮りです。
水面ゆらゆら
冒頭でゆらゆらした画面は、一番上のレイヤーに水槽をおいて水面をゆらゆらさせながら撮影したそうです。すごい。
上野啓太さんの『RUBOKU』では川として水槽を設置していましたが、こちらは画面全体のエフェクトとして使っています。水のゆれみたいなエフェクトはデジタルでもあるけど、アナログでしか出ないブレがありますね。蜃気楼のよう。天井を見ているシーンだからか暑い日に床でゴロンとなってねぼけているような印象。
ボケて写っているものはカメラのピントの具合でボケているし、この部屋の風景はいちど3Dでつくってからすべて紙に手描きで描き起こしていて、ドアや窓は切り抜いて、その穴から下のキラキラレイヤーが見えるようになっています!ぜんぶアナログ!!
実写+ペイント
実写映像も1フレームずつ印刷で出力して、その写真を置き換えることで映像に。その写真1枚ずつに絵の具を塗り重ね、アニメーションが作られています。
いろんな素材や技法がまざっているけれどチグハグではなく作品としての統一感があります。色のセンスもとても良いですね。
作者:幸 洋子さん プロフィール
映像作家。愛知県生まれ、東京都在住。日々感じた出来事をもとに、様々な画材や素材で作品を制作しています
コマ撮りやイラストアニメーション、実写映像など制作されています。NHKの『シャキーン!』にてMVもつくらています。そして今月発売の美術手帖の「2020年代を切り開くニューカマー・アーティスト100」にも選ばれ表紙を飾っています!すごすぎ!今後の作品も楽しみですね。