コマ撮りのつくり方 2020年7月16日

※追記あり マルチプレーン・線画台撮影

コマ撮りにはいろんな撮影の方法がありますが、その中で線画台マルチプレーンカメラ(多層式撮影台)と呼ばれるものを解説します。

※追記あり 上野さんに追加取材をしてガラスのサイズや機材について色々と追記しています(2022/04/09)

線画台

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こちらが線画台と呼ばれる撮影台です。こちらはストップモーションアニメーション作家の上野啓太さんのものを撮影させていただきました。

いくつもの棚にガラスが乗っています(写真ではガラスにプチプチシートがかかってます)。

奥行きの表現

ガラスの上に人形などを置き、上からカメラで撮影します。元々はセルアニメで奥行きをつける技法としてディズニーのスタッフが開発したそう。

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前景、キャラクター、遠景の絵を配置して奥行きのある風景を作れます。カメラで撮影するので手前や奥の風景がボケるのが特徴です。ガラスの数を増やせば奥行きの表現は豊かになりますが、ガラスを重ねすぎるとガラス越しに見える奥の被写体が青っぽくなります。
また横長の背景をスライドすれば電車の車窓のような表現もできます。

カメラを真俯瞰にセットする

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台の一番上に、カメラが真下に向くように設置されています。

このアームは「車載用PCスタンド」という商品。パソコンを載せる台の部分がカメラ三脚と同じ構造になっているのでカメラもつけれます。「車載用ノートパソコンテーブル」という名前などでも売られています。ネット通販で検索してみてください。

SANWA 車載用ノートパソコンテーブル

「アート・アニメーションのちいさな学校」ではコピースタンドという機材を利用しているそう。

カメラの反射

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ガラスの反射でカメラが写り込まないように、黒い板に穴をあけてカメラをのぞかせます。

ガラスのサイズ

上野さんのガラスのサイズについて伺いました。
「僕の持っているガラスのサイズは600mm×900mm 厚さ8mm強化ガラスを使っています。カットアウトや半立体であれば基本的に5mmで十分だと思いますが、僕の場合は重いものを載せることを前提にしたのでやや慎重に8mmにしました。
レイヤーが重層的になるとガラスの青みが出てしまうので必要以上に分厚くない方がいいです。場合によってはカメラに近い手前のレイヤーはサイズも小さめにして3mm位のものを使ったりすることもあります。2mmでもいいですが割れやすいです。」とのこと。

僕(竹内泰人)の持っているガラスも5mmですし、他のスタジオでも5mmの厚さのガラスを使っていました。

購入先

ガラスはホームセンターでも普通は取り扱ってないです。なのでネットでガラスの発注ができる業者に頼みます。
上野さんのガラスの購入先はこちら

オーダーガラス板.com
https://www.order-glass.com/

他にもこういう通販できるところもあります。
コーワ・ガラスカガミ自動販売機
https://www.kowa-v.jp/

知り合いの作家には天板がガラスになっているテーブルを買って線画台にしている人もいました。そういうアイデアもいいですね。

真俯瞰撮影ならではのコマ撮り

カメラのセッティングは大変ですが線画台が完成すればガラスに乗せるだけなので被写体の固定が楽です。砂やビーズなどの素材もコマ撮りできます。

キャラクタのジャンプや鳥が空を飛ぶなど空中の動きも楽にできます。

レリーフアニメーション

ガラスに乗せる素材によってアニメーションの呼び方がいくつかあります。
カメラ側だけ立体的に作って裏側を平らに作った人形のアニメーションはレリーフアニメーション(半立体アニメーション)と呼ばれます。


これは粘土をつかったレリーフアニメ。

カットアウト・アニメーション

キャラクタを紙やセルなどで作る方法はカットアウトアニメーション(切り絵アニメーション)と呼ばれます。
顔や体のパーツに分けることで関節のある動きを作れます。


これは画用紙でパーツを作ってます。ボールも固定がいらないから動かしやすい。

線画台は自作

撮影の台は市販されていないので作家ごとに自作をしています。組み立て式の棚などを使って、それぞれの撮影環境や作りたい作品にあわせて設計します。
今回は3人の作家の線画台を紹介します。

上野啓太さんの線画台

先にも紹介した上野さんの線画台。
上の写真は2015年のもので、現在はこうなってます。

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暗幕で囲われて、照明はLEDになりました。

一番下の照明は写真撮影用の蛍光灯球。調光が必要な場合はアイランプに付け替えてスライダックでコントロールするそうです。次に買う時は現在の口金に合う調光機能付きのLED球に付け替える予定とのこと。

『RUBOKU』メイキング

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こちらは撮れた展。で上映された『RUBOKU』のメイキング風景。キャラクタなどはガラス面から棒で高さを出していて、奥行きの表現や動きの自由度が上がってます。

一番下の白い板に光を反射させて、背景の緑色にあてて透過光にしてますね。それで緑色が綺麗に出ています。

やまだゆうこさんの線画台

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こちらはクレイアニメ作家のやまだゆうこさんの線画台。
「L字アングル」と呼ばれる組み立て式スチールラックを使って線画台を作ってます。僕の周りの作家さんにはこのスチールラックを使ってる人が多い気がします。

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ガラスの高さ調整にブロックを使っています。(一度つくった棚の高さを変えるのは大変)

レリーフアニメーションの工夫

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取材時にはかわいい男の子のレリーフアニメを撮影していました。今回はキャラクターを切り抜いて編集に使うそうで、右下に写り込んでいるのはレフ板としての白い板です。

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横から見るとパーツで高さが違います。こうすることでパーツの一部だけを動かすなどがやりやすくなります。

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パーツの中にネオジウム磁石をつけ、ガラス板の裏から磁石で固定してました。こうすれば簡単にはずれませんし動かそうと思えば動かせます。ナイスアイデア!!

竹内泰人の線画台

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2人にくらべてシンプルなのが僕の線画台。カメラを真下に向かせれば良いので、家にあったERECTA(組み立てラック)を使ってます。撮影しないときはバラして片付けます。(光の影響が気になるので本当は黒いラックがよいですよ)

カメラの固定

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カメラ雲台に取り付ける縦位置L型ブラケットをネジで棚に固定してカメラを真下に向けています。

持ち運びガラス板

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僕は仕事柄いろんなスタジオで撮影するので持ち運びできるように木枠に入れたガラス板を持ってます。背景との距離は枠を置く木材の厚みで調整。ガラスの厚さは5mm。

学研の多層式撮影台

「学研のにんぎょうげきえほん こども めいさくげきじょう」という学研が1950~180年代に作った人形アニメーション映画をまとめた本がありまして、その巻末に撮影台のイラストがありましたので紹介します。
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大っきい!!びっくりですね、こんなので撮ってたようです。
『こどもめいさくげきじょう』には『みにくいあひるのこ』など有名な童話をもとに作られたコマ撮り作品がDVDに収録されています。立体的な人形アニメやマルチプレーン撮影などお話ごとに作風が違い、人形や背景セットの素材など様々なテイストがみれますし、とても実験的でコマ撮り表現の幅の広さを感じさせます。

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おわりに

今回紹介したような大きな線画台がなくても、スマホやタブレット用の大きめなスタンド(首が曲がるタイプ)を使えば真下に向けれます。カメラを真俯瞰にセットできると、いつもと違ったコマ撮りが作れます。人形の固定が必要ないのでお子さんといっしょにコマ撮りするのにも向いてるかなと思います。

コマ撮りはアイデアと試行錯誤の連続です。みなさんも自分にあった撮影方法を見つけてください。それでは〜。

リンク

上野啓太 Facebook

やまだゆうこ Instagram

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