『PUI PUI モルカー』というテレビがいますごいヒットしてるのを知っていますか。モルモットが車になった世界という、パッと見はすごく可愛くて、でも内容をみるとモルモットの可愛さに対してけっこう悪い人（ドライバー）がでてきて毒のある作品です。
『PUI PUI モルカー』PV
放送時間
毎週火曜朝7：30～
『きんだーてれび』という番組内で放送されています。
見里 朝希 監督
監督の見里朝希さん、僕も何度かお会いして話したことあるのですが、彼はまさに天才ですよ。
武蔵野美術大学 視覚伝達デザイン学科 2015年度卒業
東京藝術大学大学院映像研究科アニメーション専攻 第9期修了（2017年度）
東京藝術大学大学院の修了制作『マイリトルゴート』(2018年）が世界の映画祭で受賞しまくりの、いま超注目の若手監督です。
今回は彼の過去作品を１つ紹介します。ムサビのときの卒業制作『あたしだけをみて』。こちらも羊毛フェルトを使った作品です。
あたしだけをみて
感想とか
主観ショット
まず、POV（point of view ポイント・オブ・ビュー）というのがすごいですね、主観ショットですよ。彼女が蛇のようにみえるのもすべて彼氏の視点であり、妄想というか、彼氏だけの見え方なんですよね。
作ってる身としては「うへぇ〜〜、たいへんだぁ〜〜〜」って思いながら見るはめになるんですが(笑)そのカメラワークがかなり滑らかだし、蛇になった彼女から逃げる様は『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』あたりのホラーやサスペンスを思わせます。
モルスマホ
モルモットのスマホが！見里くん、モルモット好きなんですね。彼氏がモルモットを撫でる動きがスマホの動きだった気付いた時の驚き。花を食べるしぐさが可愛い。思い出を食べて生きている感じでしょうか？
フェルトでエフェクト
草原ができるところがハートで埋まっていったり、花が咲くところではフェルトがアニメーションの残像エフェクトの様に使われていて、毛の感じがよくでています。コマ撮りとしての物感もしっかり強め。
笑いで落とす
ホラーな雰囲気から、仲直りしてハッピーエンドにするけど、最後は他の人（店員？）の咳払いをいれて二人だけの世界になっていたことに照れるというオチでしめる手腕がすごすぎる。ラストカットは二人が写っていて、客観性をみせるアングル。
二人が仲良くなってただのハッピーエンドで終わるよりも、笑いで終えるほうがより多くの人がこの作品を好きになると思います。
ストーリーのわかりやすさやテンポのよさ、キャッチーさに加えて、彼氏がスマホに夢中なことや浮気心、彼女が怒っていたり嫉妬したりという人のダークなテーマも入れつつ、コマ撮りらしさも全開で動きも滑らかな作品。この作品を栄養素の６角形のグラフで表したら全部がMAXの綺麗な６角形になっているような、そんな作品だと思います。
修了制作の『マイリトルゴート』もクオリティがとんでもなく高いですし、見里くんは卒業後はすごい活躍するだろうなと思っていたら案の定モルカーが大ヒットですよ。すごいのはNHKのプチプチ・アニメとかではない一般的なテレビ番組としてヒットしているところです。いままでにコマ撮りがあまり入ってなかったジャンルです。でもTV番組制作の人も見里くんなら何か面白いものを作ってくれるだろうと期待したんだと思います。いままでコマ撮り作家たちが活躍してこなかった領域でも見里くんは成功していくんじゃないかと期待してます。モルカーも面白いですし、これからの彼の新作がずっと楽しみです。
メイキング
作者の見里朝希さんがインスタグラムでメイキングなどをアップされていますので、いくつか紹介します。
イメージボード 彼女
キャラクターデザイン
絵がすごく上手い。他のイメージボードとか見ると「ピクサー展を見に来たのかな？」って気になりますね。
視線の動きの設計図
初期イラストアニメーション
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ABOUTこの記事をかいた人
コマ撮り映像作家、CM監督、アニメーター。本人が監督するだけでなく、他の監督の企画にコマ撮りアドバイザーとして参加することも。
マネージメントはCM制作会社キラメキ。お仕事の依頼はこちらまで
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