コマ撮りの現場でかつて主流だったランチボックスというものを紹介したいと思います。僕も使ったことがないので、聞いた話をまとめた記事になるのですが、こんな方法で撮影していたというのを知るのも面白いです。
LUNCH BOX-DV
ランチボックスはアメリカのANIMATION TOOLWORKS という会社が開発した製品で、名前の通り弁当箱のようなかわいい形をしています。
撮影方法
ランチボックスにビデオカメラとモニタをケーブルで繋いで使います。本体横にケーブルのコネクターがあります。S端子ケーブル、Firewire、コンポジットビデオなどなど。
電源を入れるとモニターにスターティングの文字が表示され、タワー型パソコンのようにファンの音がします。
ランチボックスの中にハードディスクが内蔵されていて、撮影ボタン(モニタ左のカメラマークのボタン)を押していくと画像データが保存されます。モニタにコマ数が表示されてます。
フリップラップボタンというボタンを押すと1コマ前の画像とライブビューを交互に表示(ドラゴンフレームのトグルですね)。そして再生やコマ送りのボタンを使ってアニメーションの確認します。
一部をループ再生するボタン、リールの途中に撮影ゴマを挿入するボタン、コマを削除するボタンなど。音の録音もできます。
再生は30fpsか24fpsの2種類。何コマ打ちにするかの設定をした上で、個別にコマを4コマ打ちや5コマ打ちなど長く表示することもできます。
ですが、コマを移動させたりコマのコピー&ペーストのようなことはできないようです。
撮影されたアニメーションはリールという名前でHDに保存されます。最大で22個のリールが保存でき、パソコンとつなぐことで動画データをパソコンに移すこともできます。
ビデオアシスト
もともとこの製品は「ビデオアシストシステム」のためのものでした。
フィルムカメラで撮影していた頃は動きが上手くいっているかどうかはフィルムを現像するまで分かりませんでした。そこで本番撮影用のカメラ(ライブビューできない)と別にチェック用のビデオカメラ(ライブビューできる)を置き、そのカメラを使ってアニメーションの確認をしながら撮影をします。これをビデオアシストと呼びます。
撮影の手順は
・ランチボックスで動きの確認をしながらアニメート
→チェック用のビデオカメラ(ランチボックス)で撮影
→本番用のカメラで撮影
となります。1コマにつき2台のカメラで同時に撮影していきます。
チェック用のカメラは本番用のカメラの横(または上)に置くことになるので、本番とアングルがずれます。アニメーターは本番カメラのアングルを想像しながらアニメートすることになります。動きの見えやカメラ目線の演技などとても難しいと思います。
それをさけるために小型のCCDカメラを本番カメラのファインダーにとりつける方法もあります。これならチェック用と本番用のカメラのアングルは同じになるのですが、ファインダーを撮影していることになるので画面が暗くなるのと画質がすごく落ちます。これもアニメートが難しかったようです。(ファインダーにある十字マークとかも映り込んでしまうのも、アニメートの邪魔になることがあったそうです)
おわりに
ランチボックスを使ったビデオアシストシステムはコマ撮り業界で主流でした。やがてデジタルカメラからライブビューを出力できるようになり、ドラゴンフレームなどのコマ撮りソフトが出てきたことで1台のカメラで本番撮影もプレビューチェックもできるようになりました。その結果、ランチボックスは今ではあまり使われなくなり製造も終了しました。
フィルムカメラで撮影したいときなどにビデオアシストシステムを使うことは今もありますが、その場合もドラゴンフレームを使いますね。
実際にランチボックスを触ってみるとボタンを押す感覚や、ボタンの物理的な「カシャン」という音がして中々楽しいです。1コマずつ撮影している実感があるというか、アナログな感じが好きになってしまいますね(中身はデジタルですけど)。デザインも無骨かつかわいい。ですが、1台50万円くらいしたそうで個人で持つのは難しかったようです。いまはデジカメやパソコンのおかげでコマ撮りも作りやすい時代になったな〜と痛感しますね。