作品レビュー 2021年7月26日

砂の城

前に紹介した『シュッシュッ』の作者コ・ホードマンの別の作品『砂の城』を紹介します。

砂の城


b’The Sand Castle’, b’Co’ b’Hoedeman’, provided by the National Film Board of Canada



砂からできた主人公が 仲間をふやして、それぞれに個性や能力があって、みんなで協力していきます。それぞれの歩き方や動き方が違ってて面白いし、あまりにも自然に動いてるから、もう魔法にしか見えないですね。 砂の城が完成しますが… 最後は風が吹いてすべてが元の砂丘にもどってしまいます。最初はワクワクする作品ですが、諸行無常を感じさせる結末ですね。

メイキング

『シュッシュッ』と同様カナダのNFBでつくられた作品。1977年、アカデミー短編アニメ賞を受賞。 積み木につづいて砂です。いったいどうやって撮影されたのでしょうか?グラフィック社から出版されている「コマ撮りアニメーションの秘密―オスカー獲得13作品の制作現場と舞台裏」にメイキングが載っているので少し紹介。

アイデア

ホードマンがビーチで砂の城を作って遊ぶ人たちを見てこの話を思いついたとか。子供にとって不思議なお話になればいいと思い、本人は深いメッセージを込めるつもりはなかったようですが、作品が完成すると様々なメッセージを受け取れるものになっていました。

セット

砂丘はすべてを砂で作るのは重すぎたので、プラスチックや発泡プラスチック(おそらくスタイロフォーム・発泡スチロールのこと)で土台をつくり、その上に砂をまぶして制作。砂は色や質感が違う数種類を用意して使い分けたそう。 スタジオのサイズは7m×8m、高さ4mと大きめ。最後の城のセットも4×5m、高さが1.25mと大きい。ライトは天井から吊り下げることで、照明スタンドをなくしてアニメーターが自由に歩き回れるように。

カメラ

観客が世界に入り込めるように、カメラはキャラクタと同じ目線になるように低くセットし、カメラのまわりに砂丘を囲むように配置。カメラやレンズにとって砂は大敵なのでビニルでカメラを包んで撮影。それでもレンズに砂が入ってしまったとか。

湿った砂

背景の砂は乾いてますが、盛り上がっている砂は湿らせる必要がありました。しかし水を使うとライトの熱でどんどん乾いてしまうので、蒸発しないグリセリンを使ったそう。

人形

人形のボディは発泡ウレタン。アーマチュアを仕込み、液体ラテックスをつけて、砂をまぶし、オーブンで低温で焼いてつくったそう。撮影をつづけると焼き付けた砂が落ちてくるので、人形は予備をつくり、補修しながら撮影をつづけました。

アニメート

この作品はすべてのキャラクターをホードマンがアニメートしたそうで、当時Dragonframeもないし、ビデオチェックもなかったので、ラストシーンなどは13体ものキャラクタの動きをすべて覚えておかないといけなかったとか。(ドラゴンですぐにチェックすることに慣れた僕からしたら信じられない集中力です)

砂嵐

砂嵐をつくるのが1番大変だったそうで、地面に砂を少しずつまぶしたり、息を吹きかけたりしながら砂が降り積もる様子をアニメート。そして空中に砂を撒いた瞬間にシャッターを切ることで、飛ぶ砂つぶも撮影したそう。(なんとういう労力!!)

リンク

NFB サイト
Amazon「コマ撮りアニメーションの秘密―オスカー獲得13作品の制作現場と舞台裏」 アカデミー賞を受賞した13のコマ撮り作品のメイキングを乗せた本。中古でしか手に入りませんが、面白い作品がたくさん載ってて一読の価値あります。今回紹介したこと以上に詳しいメイキングが載ってますし、ホードマン含む、作者たちへのインタビューもあって、その熱意にも触れられます。

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「コマ撮り大好きコマドリスト」を名乗って活動中。
コマ撮り映像作家、CM監督、アニメーター。本人が監督するだけでなく、他の監督の企画にコマ撮りアドバイザーとして参加することも。

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