作品レビュー 2023年12月28日

中京テレビ コーポレートムービー

ペーパークラフト素敵なコマ撮りがありましたので紹介します。

中京テレビ コーポレートムービー

スタッフ

staff
監督:小島英幸/ワタナベサオリ
制作:山田英樹/立石航大
出演:ワタナベサオリ
アニメーションディレクター:稲積君将
美術:アトリエコシュカ
照明:川口卓宏
音楽:杉浦哲郎
ヴァイオリン:岡田鉄平

ワタナベサオリ監督のツイートより

今作は小島英幸さんとワタナベサオリさんの2人による共同監督のようですが、ワタナベ監督とアニメーターの稲積 君将さんは前に紹介したG7広島サミット2023 コンセプトムービーでもタッグを組まれてました。ペーパークラフトとスタイリッシュなカメラワークスタイルに磨きがかかってますね!!

勝手な感想

ここから僕の感想と解説と勝手な解釈を書きます。

チュウキョ~くん


紙に切れ込みができて、チュウキョ~くんが立ち上がります。さらっとできていますがこのシーン大変なんです。。白い背景に白いキャラクターをそのまま置くとよくわからないことになります。この作品では照明をすごい凝っててそれぞれの紙がしっかり見えるようにしています。地面の紙はややくらく、奥の壁は朝日のように下が明るく上は暗いというグラデーションになってて、チュウキョ~くんは逆光にすることで黄色味がかった紙の色や輪郭線がしっかり見えているのです。
紙の種類・色やデコボコ具合なども計画して使い分けているでしょう。

本の階段


ここで立体の本の階段をのぼるチュウキョ~くん。平面的なキャラクターと立体的な本の組み合わせが面白いですね。
意味的には知識や経験の積み重ねで上に進んでいく感じでしょうか。

知恵を搾る

ナレーションの「知恵を絞る」という言葉にあわせて白い布がしぼられます。たぶん中に針金をしこんでしぼるアニメーションにしてると思います。そこに透明なジェルをつけて滴る水のアニメーション!!これは大変そう。

落ちる雫


ジェルは形がたもつ素材なんでしょうか。テグスで吊ってるのが見えますね。アニメーターの稲積さんは「タンクも見せればいいじゃない!」と言っていたこともあって、こういう吊ったテグスもあえて見せるスタイルですね。リアル撮影してる証。

波紋から電波

ここの水滴から波紋がでて電波になっていきます。白い素材だから自然に繋がってていいですね。

鉄塔から立体の紙ヒコーキへ


いままで平面的に置かれていた鉄塔の紙がグワッと立体になって紙ヒコーキになるというダイナミックなメタモルフォーゼ!!カメラアングルも気にならないかもしれないですが、電波のときは紙を見下ろしてて、紙ヒコーキのときに横向きになってるという動きをいたってスムーズにやってます!ヤバイ!!

ご当地モチーフ



愛知・三重・岐阜のモチーフたちのパート。たぶん車のトヨタ、名古屋コーチン、名古屋城とシャチホコ、テレビ塔、織田信長、鵜飼、飛騨高山のさるぼぼと合掌造り、鈴鹿サーキット、伊賀忍者、夫婦岩、って感じでしょうか。僕は歴史とか地理に詳しくないので全部はわかりませんでしたが…

紙の平面的なアイテムがつぎつぎと現れますが、カメラが横に進むとき(本当は紙が右に進んでるはず)のスピードもあがったり遅くなったりしてますし、移動と同時にカメラアングルも少しだけズームインしてズームアウトするという細かい緩急をつけてます。超ヤバイです。

そしてすばやいモチーフ忍者とチェッカーフラッグが入ってくるスピードも素早くさせていますね。ここも速度やタイミングの計算をしたんだろうな。超大変。

紙ヒコーキから立体ぬいぐるみへ


立体の折り紙紙ヒコーキから一旦、平面の三角形と丸になってから、立体のぬいぐるみチュウキョ~くんへのメタモルフォーゼ!!!
ワタナベ監督はこれまで切り絵の表現をよくされていましたが、ここに来て主人公が立体になります!!

ぬいぐるみと平面ペーパークラフトの組み合わせ

これは落ち込んでいる子でしょうか。そこへチュウキョ~くんが寄り添ってくれています。コマ撮り的には平面的なペーパークラフトと立体感ありまくりなぬいぐるみチュウキョ~くんの組み合わせが面白いです。


そしてここで大きく変わるのがカメラアングルです。これまで平面ペーパークラフトを見せる時にカメラは正対をキープしてましたが、ここでキャラを見下ろす斜めアングルに。より空間を立体に感じます。

紙から人に

そしてチュウキョ~くんが手に乗ると、なんと紙の手から実写の人の手に変化!

紙の空間からリアルへ


さらに人の背中が通過するにつれて人も風景もリアルに。さいごは名古屋港ですね。

紙キャラクターから立体キャラクターになり、アングルも正対から斜め、とかわってからのリアル実写世界へ世界観が綺麗にジャンプしました。それまで真っ白の世界を見てきた分、海と空の青さがまぶしい。コマ撮りの抽象世界から実写世界になるのは、思想だけではなくリアルもちゃんと見るというメッセージにも感じます。

余談ですが僕は名古屋出身だったので小学校の写生大会でこの名古屋港ポートビル(左下のロボになりそうな建物)を描いた思い出があります。

空の切り抜き

最後のキャッチコピー「発想力」の文字が紙に切り抜かれてて、その穴から空が見えるというのもオシャレ。発想・アイデアが広がってくイメージが湧きますね。

全体として

すごい作品でした。コマ撮り経験者としては見てて目眩が起きそうなハイクオリティさ。好き勝手に書いたので間違ったこといってるかもしれませんが。

ワタナベ監督のペーパークラフト作品はこれまで何度か見ていて、その美しさと技術の高さに毎回驚かされますが、今回はそこに立体や実写という世界観まで組み合わさってパワーアップしてましたね。

ワタナベ監督は以前にも中京テレビの「キャッチ!」という番組オープニングを担当されていました。

こちらもペーパークラフトの作品で紙ヒコーキもでてきます。セルフオマージュといいますか、多分ですがクライアントも監督(今回は小島監督と共同監督ですが)も同じだからこそ「前回を超えていこう」という気持ちが両者に強く出て、このような素晴らしい作品が出来上がったんだと思います。うらやましい関係です。