今回の工房見学はスタジオビンゴさんにお邪魔しました。スタジオビンゴはアニメーション作家の土田ひろゆきさんが立ち上げた会社で、アニメーションの企画からキャラクターデザイン、人形・美術制作、アニメート、撮影、編集まで手がけるアニメーション制作会社です。
今回の記事では、スタジオビンゴが所有する機材を解説しながら、どのような活動をされているのかご紹介します。
ショーリール
3Dプリンター(光造形法)
ステレオリソグラフィー(Stereolithography、略称SLA)
3Dプリンターの中で光造形と呼ばれるタイプ。液体になっている樹脂素材に紫外線をあて、硬化させるというもの。原理はUVレジンと同じ。
Formlabs製「Form2」サイト
3Dプリンターで作られたネジ
クリアレジン
3Dプリンターは使う樹脂の種類のよって透明・不透明を選べる。出力時は黄色みがかった状態だが、コーティング材を塗ることで黄色味のない透明度の高い状態になる。
ながしまたいが(以下、たいが)「透明な物の造形は難しいので、3Dプリンターで出せるのはとても魅力的ですね。例えば透明なコップとかもすぐ作れますし、サイズ違いも用意できます」
3Dプリンター(熱溶解積層法)
FDM(Fused Deposition Modeling/熱溶解積層法)と呼ばれる、樹脂フィラメントを熱によって溶かし積層させながら造形するタイプ。マシンの精度によるが、積層の跡が目立つことがある。
makerbot製「Replicator 2X」サイト
FDMの造形物
中にアーマチュアを仕込んで動くようにしている。ハニカム構造で中空になっており、見た目で想像するよりはるかに軽い。
武田浩平(以下、武田)「積層の跡が見えるので本来であればヤスリがけして、滑らかにする作業とかが必要です。この人形は大きいので、材料費や出力時間が光造形よりも抑えられるというのと、積層跡を残して木目のように見せられないかなと思って、FDM(熱溶解積層法)で試しでやってみたものです。SLA(光造形法)も最初の機種(Form1+)だと成功率が高くなかったので、FDMを使ってました。その後、Form2を導入して成功率がすごく上がったので今ではSLAをメインで使ってます。プリンターの進化によって色々と選択肢が増えてる感じです」
土田ひろゆき(以下、土田)「プリンターの性能もだし、僕たちも試行錯誤をしながらやって作って、ZBrush(3Dモデリングソフト)を勉強したり、色々さぐりさぐり修行してるって感じだよね。成功率が上がったことでビジネスとして成立したよね」
3Dプリンターによるタンク受け
こちらはタンクの受け部分(突き出し棒を取り付けるパーツ)をSLA(光造形法)プリンターで作ったもの。タフレジンという強度の高いレジンを使っている。
武田「SLAは出力後に光を当ててさらに硬化させる機械もあって、タフレジンにそれをするとかなり硬くなります。タフレジンは普通のレジンより丈夫に使えて、他にも色々なレジンが出てますね。」
タフレジンで出力したもの(上)と黒く塗装したもの(下)。硬いのでネジ切りも可能。大きい穴は3Dソフトのモデリングのときにあらかじめ開けておき、プリンター出力してからそこにネジを切る。
土田「摩耗もないかな。アクリル板でつくったやつより強いよ。」
3Dプリンタによるタンク制作
3Dプリンターで作ったタンクの試作機。(タンクについての記事はこちら)タンクは基本的に職人が1台ずつ手作業で作っており高価なものになってしまう。それを簡易的に低価格で作れないかと作ったもの。ボディは基本的にFDM(熱溶解積層法)プリンターで作られている。
タンクのボディと違う樹脂で作られたラックギア(歯車と歯のついた板)のパーツ。
ボディと同じ樹脂で作ると摩耗ですぐに使えなくなってしまうので、硬度の高いパーツにしている。それでも摩耗など消耗するので、このパーツだけ交換することも考えてデザインをすすめている。
これまでの試作品パーツがずらり。デザインが微妙に変わっている。
たいが「こういうパーツはやっぱり精度が大事で。支柱につける輪っかのパーツが0.1mm広いとゆるゆるで固定できなかったり、逆に0.1mm狭いと硬くて壊れそうになったり。何個もテストして形もちょっとずつブラッシュアップしてるところです。このテストを全部SLA(光造形法)でやってると材料費が何万円にもなっちゃいます。FDM(熱溶解積層法)なら数千円で作れるのでテストもしやすい。素材の質だけじゃなくて作りやすさも違うので、いろいろな意味で素材の長所を選んだほうがいいですよね」
販売も検討されているそうなので、興味のある方はビンゴのツイッターなどを是非チェックしてみてください。
レーザーカッター
レーザーカッター。アクリル板やMDF(木材チップと樹脂で固められた板)などが切れる。
UNIVERSAL LASER SYSTEMS 卓上・小型レーザー加工機「VLS3.50」サイト
脱臭集塵機と合わせて使用している。
日本家屋のセット
自主制作の為に作られたセットたち。壁の木目調になっている部分は、バルサ材にレーザーカッターで木目の凹凸をつけたもの。
出力を落として彫刻する(切断までせずに凹ませる)ことができる。出力の値を間違えると燃えてしまうので、初めて使う素材は何度か試して、適した出力をさぐる。
アクリル板&レーザーカッターによるタンク
アクリル板をレーザーカッターで切り出して、タンクの受け部分を作った試作機。
土田「前にレーザーで作ってみたものなんだけど、今後は3Dプリンターで作るのが効率的かな。いつかは3Dプリンタの金属版も手に入りやすい価格になるかもね」
大型プリンター
土田「実際にセットの奥に背景出力を置いた方がCGよりも空間が作れることがあるから」
モーションコントロールカメラ
撮影スタジオに置かれたモーションコントロールカメラ。制御はドラゴンフレームからできる。レールや回転する治具にLANケーブルで接続し信号を送る。
モーションを使った作例こちら。
ビンゴのサイト内にて動きについての詳しい解説ページがあります。サンプル動画もあるので分かりやすいですよ。
http://studiobingo.co.jp/motioncontrol.html
ビンゴ所有のモーション機材(一部)
DitoGear(撮影機材メーカー)
https://ditogear.com/
Omnislider
https://ditogear.com/products/omnislider/
スライダー。ビンゴではメインとサブ用にServoとStepperの2種類を各一つずつ所持。
OmniHead
https://ditogear.com/products/ditogear-omnihead/
カメラを取り付けるヘッド。パンとティルトの2軸が動かせるもの。スライダーと合わせる時は一つ、MiniJibも使う場合は先端にも更に一つ付けています。
サブのスライダーにも一つ使えるように計3つ所持。
MiniJib
https://ditogear.com/products/ditogear-minijib/
OmnisliderとOmniHeadと合わせることで計5軸動かせる。
LensDrive
https://ditogear.com/products/ditogear-lensdrive/
カメラのズームとフォーカスを制御する。
DragonBridge
https://ditogear.com/products/dragonbridge/
Dragonframeに接続する為のもの。
DMC-16
https://www.dragonframe.com/product/dmc-16/
同じくDragonframeに接続する為のものだが、DMC-16を使うとリアルタイムでの動きの確認やDMXの制御などが可能になる。