鉛筆による細密画が特徴的な人形やセットデザインが面白いアニメーション作家、吉田ヂロウさんの作品を2つ紹介します。
『繩』
芥川龍之介の「蜘蛛の糸」に着想を得た作品。 2020年制作。ちょっと怖い作品です。
『蘆屋家(あしやけ)の末裔』
こちらはエドガー・アラン・ポーの「アッシャー家の崩壊」を元に舞台を日本に置き換えた作品。2018年制作。
アッシャー家というのが元ネタなので蘆屋家(あしやけ)なんですね。
人形やセットデザインの白黒で緻密な雰囲気がそれぞれのストーリーの不穏な感じと非常にマッチしていて良いですね。引き込まれます。
初めてコマ撮りをつくったときの発想について
自分の得意技を活かす
去年、吉田さんに作風のことを質問しました。
吉田さんは、コマ撮りを始めようとした際に美術セットをつくるノウハウがなかったので、 前から描いていた鉛筆画を立体化する事で造形スキルの不足を補った、ということをお話していました。
この発想ってすごい大事だと思います。コマ撮りは「表現したいこと」と「出来ること」のバランスをとる必要があります。
出来ないセット作りを頑張るのもいいけど、スキルアップに時間がかかる。もともとスキルがあった鉛筆画を使えばセットが作れるし、それが吉田さんのオリジナルな作風になっています。
人形もストーリーもつくれないときのアイデア
僕が最初につくったコマ撮り『賑やかな缶』は空き缶が動くのにあわせて効果音が鳴って「缶が何かの動きを表現してます(例えば犬)」というショートコントの詰め合わせみたいな作品でした。
なぜそんな作品にしたかというと、僕はストーリーも思いつかないし人形をつくるスキルもなかったので、キャラクターもお話も必要ない企画を考えたのです。
空き缶なら大学のゴミ箱から集めれるし、効果音なら無料のが手に入りました。そうやって、コマ撮りをつくろうと決めてから1ヶ月で完成させました。
吉田さんと僕の出身大学が同じで、九州大学芸術工学部というアートと理系を足したようなとこなので、考え方も似てるのかなとか思いました。
「どんな作品なら作れるか」から発想しよう。
自分のできることを考えて、そこから「どんな作品なら作れるか」を発想する。そういうやり方も良いと思います。
オリジナルの人形が作れないなら持ってるオモチャからストーリーを考えればいい。セットが作れないなら「私の机の上」というストーリーを机の上で撮影すればいい。動かすのが苦手なら会話劇にすればいい。ストーリーが思いつかないなら、動きが面白いだけの作品にすればいい。
やりたいことを目指して頑張るのも良いですが、自分の出来ることから発想するのもよい方法です。