先日、コマ撮りの撮影について質問がきまして、それに返した答えを記事にしようと思います。
質問というのはこちら
カラ舞台が必要な時に、カラ舞台を撮ってから人形を置くとピントからズレてしまうのどうしたらいいですか?
人形にタンク(突き出し棒)をつけて撮影するときに、タンクを後でバレ消しするから合成用にカラ舞台が必要なんだけど、ピントがあわせれないので困っているわけですね。何言ってるか分かんないって人いると思うので、まずは合成とかバレ消しについて簡単に解説します。
バレ消しについて
タンク
自立しない人形をささえたり、人形にジャンプさせるときに取り付ける道具をタンクと呼びます。詳しくはこちらのタンクの記事
バレ消し
その棒など見えたら困るものを編集段階で消す作業をバレ消しといいます。映像ソフト(Adobe 社のAfterEffectsなど)や画像加工ソフト(Photoshopなど)などデジタル処理で合成します。
カラ舞台
バレ消しをするときに棒をなくした部分には背景が必要なので、撮影のときに人形(とタンク)を置いていない背景だけの写真を撮っておきます。これをカラ舞台と呼びます。
ドワーフさんの動画 こまちゃんと踏み出す『バレ消しはじめのいっぽ』が参考になります。
バレ消しについてのちゃんとした記事を書きたいと思ってるけど、できてない。すいません。
カラ舞台を撮りたいときにピントをあわせたい話
質問者さんは、
1:背景の中に人形を置いて全体のレイアウトを確認して、人形にピントをあわせる。
2:人形をどかしてカラ舞台を撮影。
3:再び人形を元の位置に置きたいけど、ズレてしまうから人形がピントの位置からずれてしまう。
というわけですね。同じ位置にすることを同ポジ(どうぽじ)とかって言いますが、同ポジの再現ができないから困るというわけ。
解決方法 6つ
やり方は色々あると思いますが、とりあえず思いついた方法を6つ書きます。
方法1:前カラと後カラ
カラ舞台はアニメートをする前にとる前カラ(まえから)とアニメートが終わった後に撮影する後カラ(あとから)があります。
後カラは、演技がおわった人形をどかしてカラ舞台を撮るだけですね。後カラが楽ですが、背景の小道具もアニメート中に変わっていく場合などは前カラが必要な時もあります。状況によりますね。
僕は、撮影中に背景を触ってしまった時やカメラがずれた時などは、そのタイミングでカラ舞台を撮って編集のときにコマにあわせて必要なカラ舞台を選ぶこともします。(本当はカメラ動かさないのがいいですが)
方法2:ドラゴンのパカパカで見て直す
前カラをしたい場合は、僕はたいていは次の手順でやると思います。
1:人形を置いて、ピントをあわせて、シャッターを切る。
2:人形をはずしてカラ舞台を撮影。
3:人形を戻して、ドラゴンフレームで、1の画像とライブビューをパカパカ(トグル、自動切り替え)してさっきの人形の位置に極力あわせる。
パカパカであわせるのは、画面で見た時に上下左右のずれはわかりやすいのですが、奥行方向の前後のズレはちょっとむずかしいですね。手前にずれてると大きく見えて奥にずれてると小さく見えるわけですが、人形の向きが回転してるとあわせるのは難しいで。これは慣れが必要です。あと根性。
僕はこの同ポジに戻す作業が得意で速いですし好きな作業です(笑)アニメーターがいても同ポジ再現のときだけ触らしてもらうこともあります(笑)
方法3:ドラゴンのメモ機能でマーキング
似た方法ですが、ドラゴンのメモの機能で、人形の輪郭線を画面に書いてそれに合わせるという方法もあります。
輪郭線ではなくて人形の足元だけマークを書くことも。
方法4:タンク位置をマーキングする
同ポジ再現のアナログな方法として、人形を置いたときのタンクの土台の位置をマーキングするというのもあります。
マーキングの仕方は好みだと思いますが、撮影台に直接テープでタンクを四角く囲うように貼ったり、角の位置が分かるように三角形のシール(テープを切ってつくります)を貼ったり。
カラ舞台を撮影した後に、マーキング位置にタンクを置けば人形の同ポジが再現できます。
方法5:目安棒を使う
タンクがないとき、目安棒を使う方法もあります。
目安棒はものの場所を教えてくれる道具。
こちらの記事ではプロ仕様のものですが、ようは土台と棒があればいいです。棒は竹串とか針金とか、定規でもいいでしょう。
1:人形を置いてピントを見る
2:目安棒で人形の足元とかどこかのポイントをきめる。目安棒の土台はカメラアングルの外になるように。
3:目安棒の土台のマーキングをする。
4:目安棒と人形をどかしてカラ舞台を撮影
5:マーキングに目安棒を置いて、目安棒にあわせて人形を置く。
正直ぼくはドラゴンつかってあわせることが多いので目安棒をあまり使わないし、このやり方はちょっと手間な感じしますが、こういう感じで「この位置を何度でも再現できるようにする」という工夫をアナログな工作で頑張るっていうのはよくやっているように思います。
方法6:ピントを深くする
ちょっと違う解決方法として、ピントが合う範囲を深くする(広くする)というのもあると思います。
カメラ設定画面でF値を大きくするとピントの合う範囲が深くなります。それなら人形が同ポジから多少ずれても大丈夫(多少ね)。
F値を大きくすると画面が暗くなるのでシャッタースピードを長くしてもとの明るさになるようにしてくださいね。
以上、思いついた解決策でした!
質問を募集します
コマ撮りに関する質問を募集します。
質問がある方は僕のツイッター(さいきんDMつかえないのかも。リプライとかでどうぞ)かこのサイトのお問い合わせフォームから書いていただければ直接返信をしますし、みんなのためになるものは記事にしたいと思います。
“あなたのハテナはみんなのハテナ”ってことで、質問に答える記事を書いていけばたくさんの人が助かるかな、という感じでやっていこうと思います。
コマドリルですでに記事になっている内容でも質問してOKです。記事が多すぎてどこにあるかも分からないと思うから。ドラゴンについても、バージョンアップで微妙に変わった機能とかもあるので新しく記事に書こうと思いますし。
コマ撮りの仕事についての質問とか個人的な質問とか、記事にしてほしくない場合は僕から返事だけ書きます。
同業者の方へ
この質問もそうですが今後の記事でも「他にこんなやり方あるよ」というのがありましたらゼヒゼヒ連絡ください。
作家ごとスタジオごとにやり方が違うからもっといい方法もあるだろうし、我流でやってきた僕が思い込みで変な方法でやってることも絶対あります。そういうのがあったらツッコミを入れてもらえたら嬉しいです。めざせ集合知。
それでは。