プロのアニメーターさんが使っている道具を見せていただく「アニメーターズツールズ」。
前回に引き続き、アニメーター・峰岸裕和さんの道具を見せて頂きました。
【タンク】
リグ、戦車などとも呼ばれます。
人形に取り付けた突き出し棒を、上下に動かす機材です。
タンクは実はあまり決まった形がありません。
共通する特徴は、ギザギザのついた金属の棒(ラック)と、それにかませるギア部分です。
これで上下動をさせます。
あとは人形の重さと均衡を取るため、重りをのせること(黒くなっているところには鉛の塊などがのせられています)も特徴です。
ベテランのアニメーターさんは、人形の重さやセットの大きさに合わせて様々な大きさのタンクを揃えている方もいらっしゃいます。
①基本的な形と突き出しの繋げ方
※静止画はクリックで拡大
真鍮のギアとラック、ラックを押さえる土台部分、
ツマミやL字金具などのパーツを組み合わせて作られています。
両サイドにギアを操作するツマミがあり、左右どちらからでも操作できます。
大きいツマミを回すとラックが上下動し、下の小さいツマミが、上下動を固定するストッパーです。
重りは鉛のインゴット。
ネジでしっかりと固定されています。
中心のプレートは、ラック(ギザギザの真鍮棒)がぶれないように押さえる役割があります。
下の写真の黒いタンクは、プレート部分が矢印のような形状をしていますね。
どれだけ上下動したかを目測するのに便利そうです。
黒いタンクの方はラックの上下に穴が空いており、ここに球体関節を差し込んでイモネジで固定する構造のようです。
うさぎのプレートが特徴的な右側のタンクの方は、
ラックの上に棒状の部分があり、ここに接続用のパーツをはめて
突き出しを繋げます。
②シーンによって、いろいろな大きさを使い分ける
こちらは、ラックが上下動するのではなく、突き出しを固定する部分が上下動する構造です。
大きさもコンパクトで、狭いセットの中でも取り回しが良さそうですね!
重り部分には、合成で消しやすいようにブルーが貼られています。
アルミや真鍮など加工しやすい材や金属パーツを使い、手作りで作られています。
上の写真をみてください。真鍮の小さなハンドルの上に、
真鍮板の途中まで、手で切られたような切れ込みが入っているのがわかりますか?
この切られた部分は、ストッパーの役割を果たします。
ハンドルを回すと左右の真鍮板が閉じていき、ラックを締め付けるという構造です。
下の写真のタンクも、上下は逆になっていますが同じ仕組みで作られています。
③美しく実用的なデザイン
こちらには緑のテープが貼られていますが、
これはアングル内にタンクが入ってきてしまった時用に貼ったのだと思います。
合成の時にクロマキーで抜くため、青や緑のテープが使われます。
左側のタンクは、①とほぼ同じ形をしています。
右側のものは、少し変わった形状をしていますね。
この円盤のような構造は、左右に二つ付いたツマミを緩めると、
ラック自体の角度を変えることができるのです。
この構造はアニメーション用の「吊り具」にも使われています。
上下動に限らない動きをしたり、床が水平ではない場合に使えそうです。
そして、もちろんこの構造も手作りです。この加工をするにはフライス盤など専門的な電動工具が不可欠だそうです。
見た目にも美しく実用的な、素晴らしいデザインですね。
④手軽に作れる!?既製品を応用したタンク
こちらはミスミのスライダーステージを使って作られたもの。
ギア部分を真鍮で作るものより、工作の手間が少ないことと、
スライダーの上下動にブレがなく、精度が高いのが特長だそうです。
手作りした部分は、突き出しをつける六角形のパーツと、後ろの重り部分のみ。
ギア部分の工作はハードルが高い…と感じている方は、真似してみてはいかがでしょうか。
タンクが欲しい!そんな時は
タンクは一般的に売られているものではありません。
金属工作が得意な方は、今回の写真を参考にしつつ、
ご自分のアイディアを盛り込んで、自作してみるのもいいと思います。
また、コマ撮り用の関節を作っている川村徹雄さんのサイトで
タンクの販売もされているようなので、購入してみるのもいいかもしれません。