コマ撮るヒトビト 2017年12月15日

オカダシゲルさん インタビュー 2/2

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オカダさんインタビュー後編は、こちらが事前に用意したアンケートの回答からの話と、自主制作への思いを語っていただきました。
インタビュー前編はこちらから。

オカダさんにアンケート

Q:経験のある仕事(監督・アニメーター・美術・編集など)について

オカダ(以下、オ):規模の小さいコマ撮りムービーだと、絵コンテを自分で書いて、人形もセットも作って、完パケまで一人で(もしくは数名のアシスタントと)制作します。大きな仕事はアニメーターのみ。

Q:いつも使っているカメラは?

オ:Canon EOS 7D。

泰人(以下、た):本体がキャノンでレンズをニコンにしてますか?

注釈:デジタル一眼レフカメラではシャッターを切る際に、カメラ本体からレンズに対して電気信号を送って絞りを閉じるのだが、この閉じ幅が一定にならずにフリッカー(明るさのちらつき)が発生することがある。それを解消するためにはカメラ本体とレンズが同期しないようにする必要がある。カメラ本体とメーカーの違うレンズをマウントアダプターを使ってつないだり、レンズの電気信号を伝える電極にテープを貼って信号がいかないようにするなどのテクニックがある。レンズについているカメラ本体と繋ぐためのツメを折ってしまう方法もあるが、二度と復旧することはできない。

オ:ずいぶん前に他のカメラでレンズの絞りをコントロールするツメを折る方法を教えてもらって使ってたけど、今の7Dはキャノン純正を使ってる。周りでは「パカパカする」とか聞くんだけど。うちで撮影すると酷いフリッカーはほとんど出ないから、そのまま。

阿部(以下、あ):あれはすごく絞り込んでるときとか多いですね。開放気味だと気にならないときもあります。

オ:あーそうなんだ。僕も絞るけどなー、なんでだろな。

あ:あと家で撮影しているとレンズじゃなくてもパカパカします。電圧でがくんと変わったりするから。もう、そういうの(フリッカー)ありきというか。

オ:この家は古いのに電圧は安定してて。後処理でフリッカーを消すことはほとんどない。

Q:普段やるアニメのフレームレート

オ:だいたい15。1秒間30コマの2コマ撮り。youtube にアップしてるのはみんな15fps。

あ:24ベースより30ベースの方がやりやすいですか?

オ:たまに仕事で24で撮って下さいって言われて動かすけど、24だとちょっと優しい感じの動きになるかも。若干ゆっくりになって、それはキャラものとか可愛いものを撮る仕事としてはいい、確かにしっくりくる部分はあるんだけど。自主制作でちょっとトガかったものつくろうとすると(30がいい)。

た:アクションとか速い動きとかですか?

オ:そうそう。なんかね30のちょっとギスギスした感じが好きかなって(笑)。

あ:キレがある感じ?

オ:そうそうそうそう、可愛いキャラクターものとか撮るにはちょっと向かないかもしれないんだけど、アクションとかなんかちょっとクセのあるのを撮るんだったら1秒30の方がなんか似合うような気がするかな 。

あ:24の2コマ打ちの12と15だと違う感じがありますよね。15はキレがあって、12はコクがある感じ。(笑)

オ:そうそう、そういう感じ。

Q:タイムシートは使いますか?

注釈:タイムシートとは、撮影内容をコマ番号ごとに書き込んだ表。事前にキャラクタのアクション(「歩く」「ジャンプする」「着地する」など)を何コマで撮影するのかを計画して書き込み、撮影して変更があればその都度メモを書き込む。また、素材撮りやカラ舞台などを撮った時の記録として書き込むこともある。撮影後は映像編集者が撮影内容を把握するのに使われる。

オ:うちでやるときはほとんど書かないかな。物が多いときは使うけど。 CMと違って「このカットは1秒10フレです」とかいう尺のシビアな話もないし、好きなように好きなだけとる(笑)。
仕事の時はほぼ100%使う。一応記録として残しておかないと。後はやっぱりアシスタントにお願いするとなるとタイムシートがないと出来ないから。制作さんに「編集の時用にとっておきたいんですけど」ってなると横山さん(オカダさんのアシスタント)にコピーしてもらって、コピーしたやつを渡して。タイムシートは結構しっかり書く。汚い字で書いちゃうけど(笑)。毎回横山さんが読めないくらい。7と9をよく間違えるんだよね。ちゃちゃちゃと書くと9に見えちゃう(笑)

Q:好きな映像作品、影響を受けた作品はなんですか?(コマ撮りに限らず、映画・アニメなんでも)

オ:何かなー。あまり影響を受けない方だけど。たまに思うのが、僕って小学生の時に『ガンダム』が始まって、中学生の時が『バックトゥザフューチャー』かな、『インディジョーンズ』とかそういうテレビアニメ、テレビロボットアニメとスピルバーグ全盛期の時に子供の頃過ごしてきたから、なんかそういうエンターテイメントな物っていうのは下地になってるのかなと思う時はある。日曜洋画劇場とかでジャッキー・チェンの『酔拳』とか『蛇拳』とか、そういうの見てた。『少林寺木人拳』が大好き。

た:その影響、ありそうですね。自主制作はアクションが多いですし。

オ:そうそう。自主制作やってたころから結構思ってたのが、あまり動かない自主制作作品が多いなって。僕はそういうのはね。

た:世間的に多かったということですか?

オ:多かったと思う。風情漂う動かないやつ。そういうのに反感を感じてた(笑)「アニメなのに動かないじゃん」って。単細胞な考えだけど(笑)でも影響を受けたってそういう「動きで楽しませたい」みたいなところ(ガンダムやジャッキー・チェン)なのかな、多分。

Q:お気に入りの道具・手放せない道具は

オ:ラジオペンチ、あと自作のツールね。

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BAHCOのラジオペンチ

オ:これ僕のお気に入りのラジオペンチ。これを10年くらい使ってるかな。僕は物を直接見て触って決めるタイプだから、メーカーの名前とかは全然興味なくって。前はもっと小さいやつを使ってた。小さいやつは先が細かいところに入るからいいんだけど、持ち手も小さくなっちゃうから長時間使ってると手に食い込んできて痛くなっちゃう。だから、持ち手は大きくて先が小さいラジオペンチを探していて、これが僕が求めていたのに近かったから、気に入って使ってる。

誰だったか、ラジオペンチの先をヤスリで削って細くしたりとか、片側は丸くして、もう片側は削って薄くして、薄くした方で虫ピンをクイッて曲げるとシャープに曲げれたれるように加工しる人もいたり。先を丸くけずると人形を気づけずに済むとか。そこらへんのノウハウは聞いたことあって、僕も一時期それをやってみたんだけど、いまはやってない。それぞれのアニメーターのこだわりというか好みだよね。

ピンセットは先が細いのがいいと思っていたら、それで人形を傷つけちゃったりとかもあるから、ほどほど丸くなっててもいいのかなと思ったり。それで持ってるピンセットの種類が段々ふえてっちゃう(笑)

Q:差し入れにもらったらうれしいもの

オ:甘いもの。お酒も嬉しいけどね。

Q:アニメ中は音楽を聞く?

オ:一人でアニメートするときは聞かない。かける人もいるけど、僕はダメなんだよね。どうもね音楽かけながら1人でアニメしてると集中できなくて。シーンとしているところでコツコツやったほうが集中できる。でも、誰かほかの人が同じ部屋にいるときはシーンとしてるのはすごくイヤで、その時はBGMをかける。その方がやりやすい。

あ:そのときの音楽は?

オ:お任せ。何でもいい。うるさいのは嫌だけど。

Q:現場であった困ったことは?

オ:花粉症の時のアニメート(笑)。ひどかった時がギルドの時かな。その時まで花粉症にならなくて、鼻水すごい出てなんか調子悪いなと思ってて。はじめ花粉症ってわからずに風邪薬飲んでたんだけど全然治んないし。もうくしゃみがひどかった。人形を触ってる時にくしゃみが出そうになって、そのたんびに手を離さなくちゃいけないから。それで他の人に「それ花粉症じゃないの?」って言われて、これが花粉症か!って思って。それで花粉症の薬買ってきたら一発で治って。「はー、なんてやりやすい」と思いながらやってた(笑)

Q:この仕事をしていて楽しいと思える瞬間は?

オ:アニメートしたあとプレビューして「わぁ、可愛いとか」リアクションあった時。プレビューの瞬間が一番ね。その時のためにアニメしているようなもんって言ってもいいぐらいだから。でも、テンションが低い現場だとリアクションがない (笑)。撮影した後にみんなでプレビュー見て「うん、うん、はい、バレ、オッケーですね?」「オッケーですか?」「うん」「はい、次のカット」みたいな(笑)

た:「わー!」ってならないんですね(笑)

オ:ならない。淡々と進む。ちょっと辛いときがある。たまに、スポンサーとか広告代理店で若い人が来て「可愛い!」とか言ってくれるとすごい救われる (笑)。

自主制作とビジネスについて

アンケートの質問から派生して、自主制作に対する想いを語っていただきました。
(ここで語られるオカダさんの自主制作とは現在公開中の『化けヤモリ』のこと。取材したときはまだ制作中でした)

「動画を一本、なんでもやっていい!と言われたら何を作りますか?」

た:という質問を用意していたのですが、いまは自主制作で好きなものを作っている感じですか?

オ:もっとクオリティをアップしたいかな。僕ね、あまり長編ものには興味がないっていうか。例えば2時間くらいの映画を撮りたいかっていうと、あんまり撮りたいとは思わない。それよりもテレビっ子だったから、毎週30分あるシリーズ物に対するあこがれがあるんだよね。その頃の毎週やっていたアニメをどれだけワクワクしながら見てたか。番組の終わりに「to be continued…」って出た時の「えー、ここで切る!?」みたいな (笑)。予告を見て「どうなるんだろう!」っていうワクワクさが。ああいうのを自分も味合わせたいというか。それにさ、映画って長編っていっても2時間でしょ。ワンクールのテレビものって言ったら、30分かける12話だから6時間でしょ。そっちのほうがはるかにドラマを描けるし、面白そうな気がしてる。だから僕は「何撮りたいか」って言われたらシリーズ物を撮りたいですって言うかな。

あ:シリーズ物で、SFとかアクションとかっていうジャンルだと?

オ:僕はアクションかなやっぱり。エンターテイメントなものを。コマ撮りのシリーズ物がもっと増えてもいいんじゃないかなって思うし。最近はAmazonビデオとかもそうだけど、NetflixとかHuluとかで、いくつかコマ撮りのシリーズ物が始まっているんだよね。Amazonビデオが子供向けの『タンブルリーフ』っていうシリーズをやっているし、この前Netflixの方でも、アメリカのスタジオがコマ撮りを作るって発表したし。だからネット動画で今ちょっとそういうのが出てきつつあるから。もしかしたらそういう流れがこの先強くなるんじゃないかな。あとドワーフの、こまねこもこの前Amazonビデオで新作が流れたし、まだシリーズ化が決まっているわけじゃないけど。今はシリーズ物のほうが入りやすいのかな、映画より。

あとは仕事的には、もっと新しい媒体を活用したい。プチプチアニメとかね。テレビもいいけど、枠があって1年間に放映できる本数が決まっているから、誰かが入ったら誰かが抜けなくちゃいけない。

テレビCMも波があるし、トータルの需要もそんなに多いわけじゃないから。やっぱり誰かが入って来たら誰かが抜けなくちゃいけないっていうところで、クライアントワークとしては広がりがないなって。あと基本的にはやっぱり東京近辺に住んでいないと仕事にならない。地方じゃコマ撮りを仕事にするのは難しい。そういうのを考えると僕はYouTubeに限った話じゃないんだけど、もっと他のメディアで広がるようなビジネスにしていかないと、日本のコマ撮り人口って増えていかないんじゃないかなって思うんだよね。クライアントワーク以外の部分で、自分でビジネスを作り出すっていう流れもあったらいいなって思ってる。

自主制作って基本的に自分が作りたいものを作るでしょ。そうじゃなくて、あくまでビジネスとして他の人に楽しんでもらうっていうのを第一優先にして自主制作でアニメを作る。商業用自主制作アニメっていう考え方で。それでビジネスに繋がることができれば。YouTubeは枠(尺やチャンネルの数)が決まってないから、みんな自分の動画をアップしても、誰かが来たら誰かが抜けなくちゃいけないってことがない。住んでいる場所も関係ないし。そういう、どんどん広がっていくビジネスができればいいなって。そういうのはこの先やりたいなっていう部分ではあるかな。

あ:面白い時代ですよね。

オ:そうね。僕が8ミリ撮ってた頃はさ、世界に動画を配信するのを個人でするなんて夢物語だった。せいぜい公民館を借りて上映会をするのが関の山だったけど。それが今や無料でさ、個人で世界に動画を配信できるっていうのはものすごく可能性のあることだし。海外ではそれで映画監督デビューしている人もいて、そういう意味では日本のYouTubeをやっている人は、ハイレベルな機材は使っているけど、中身はホームビデオ感覚だから。もっと映像的に志の高い人たちがネット動画の世界に入ってくると面白いかも。って思うんだけどね。

ただ、やっぱりYouTubeやると全然、考え方が違うなって思う。プロが普段こだわってやってることの無意味さ。って言うと失礼なんだけど、仕事では当たり前に時間をかけてこだわるところがYoutubeでは評価されないというか、正直そういうところを見ている人って世間的にはほんの一部なわけで。たとえば画面がチラツキまくりで画面がガクガク揺れるような動画でも数百万再生いったりね。あと、プロを目指すコマ撮り作品を作っている人達は自分で考えて作ったオリジナルの創作物を使うのが常識だけど、YouTubeでは市販のおもちゃとかフィギュアを平気で使ったり。著作権どうこうの話じゃなくて、クリエイター側のこだわり所がね。全然違う。YouTubeはとにかく世間的に面白ければいいわけで。面白いってその、俗っぽい面白さだけじゃなくて、単純に楽しめる大衆性のあるものという意味でね。だから仕事として物作りをしている人達とユーチューブクリエイターと言われている人たちって、目指すものも、こだわり所も価値観も全然違う。それがYouTubeでは並んで比べられちゃうから。それって、ある意味残酷な話で。でもやっぱり僕はね、そこに踏み込んでいってもいいんじゃないかなって思うし。そこから学べるものもあるから。だからこの先もYouTubeはやりたいなって。CMとかクライアントワークをやりつつね。だから、今作っているホラーも定期的にあげられればいいなと思ってる。

あ:いまのホラーはシリーズ物なんですか?

オ:シリーズ物。5本作って、5週にわたって公開していく。できれば、それを隔月くらいで出来れば…ね。だから、2ヶ月かけて作って5週配信。で、また2ヶ月かけて作って5週配信。間に配信しない時期が一月あるけど。出来れば、それくらいのハイペースで配信したい。今は難しいけど。

あ:ビジネスとしてYouTubeの作品を作るという発想はなかったです。

オ:請負業だけだと不安定だから、少しでいいから定期収入を作ろうと思って。クライアントワークがパタッと無くなって「あ!?どうしよう」って思ったときにはもう遅いから。やっぱり順調なときにこそ、コツコツやっておかないと。それはもっと早く始めるべきだったって僕は反省している。

あ:私もせめて年一本は作らないとなぁ、って思ってはいるんですが…(苦笑)

オ:僕も年に一本は作ろうってルールはやっていて。YouTubeであたった『ORIGAMI ANIMATION』っていう動画も、その年の12月後半になって、「今年一本も作ってない、やばい、どうしよう」ってなったときに、そうだこの前、仕事で折り紙アニメやったなぁと思って。

オ:その折り紙アニメを四日くらいでパパパって作ってアップして、公開した直後は全然反応がなかったんだけど、1年ぐらいしてから、いきなりYouTubeのトップページで紹介されて、1日で30万再生とかいって、気がついたら240万再生。あのころは全世界共通のトップページがあって、あれに載ったらどわーって大量のメールが来てびっくりしたけど。

あの動画がきっかけになって仕事にけっこう繋がった。年に一本の動画を作る。って具体的に何かを狙っているわけじゃないけど、何かやらないと何も起こらないし。何がどう転ぶかわからない。だから年に最低一本は作ってアップするという自分ルールはやって良かったと思っている。

アニメの量

オ:それにアニメーターとしてやっていくためにも、仕事以外に自分で機会を作ってアニメートするのは必要だと思っているし。いま、ベテランで活躍しているアニメーター歴何十年っていう人と、今から同じ期間アニメしたとしても、長編の人形アニメーションを撮っていた昔と、CMとか短いアニメが主体の今じゃ、アニメする量が全然ちがうじゃない。だから、仕事以外でも自主的にどんどん動かさないとね。いまから追いつけるものでもないけど。それでもやっぱりね。それに、しばらく動かしてないで現場にいくと最初調子が出なかったりするし。本番前に家でテスト撮影するだけでも違うけど。やっぱりコマ撮りの絶対量が今の人は僕も含めて少ないから。そこの穴埋めは何かしていかないと。…って意味でも自主制作は続けていきたいかな。

インタビューを終えて


色々なお話が聞けましたが、どの話でもコマ撮りへの情熱を感じました。コマ撮りについて独学でスタートして、アマチュア時代からホームページを通じていろんな人と交流し、だんだんとプロの現場へと繋がっていったのは、オカダさんのコマ撮りへの情熱・勉強熱心さが導いてってくれたという印象です。いまもアーマチュアの改良や新しい素材を試したりしているのがツイッターで見られます。その熱意には本当に頭が下がります。「自分が作るものを外に出さないとコマ撮りの何かと繋がりが持てない」「自分が作ったものがあって初めてどっかと繋がりができる」という言葉が刺さりました。作家というのはやはり自分の作品で人や世界と繋がっていくんだと思います。オカダさん、インタビュー受けていただき、ありがとうございました。これからも新作楽しみにしてます!(泰人)

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竹内 泰人

「コマ撮り大好きコマドリスト」を名乗って活動中。コマ撮りの監督したり企画を考えたり、アニメーターをしています。CM制作会社キラメキにてマネージメントをお願いしています。お仕事の依頼はこちらまで
【キラメキのサイト】メール:kirameki@kirameki.cc
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