コマ撮り道具 2017年6月24日

吊り具-dwarf編③-【Animator’s tools】

アニメーターズツールズdwarf編・第3弾は、人形を糸で支えるための器具「吊り具」についてです。

吊り具

 

dwarf_01_X1_0162※画像はクリックで拡大


ボビンの先から繰り出した糸を人形に取り付け、上から吊るための道具です。
人形が宙に浮くアニメーションの時や、歩きなど不安定な態勢になるアニメの時に使われます。

キザギザの棒(ラック)とギアで高さの調節ができることは、タンクと共通していますが、先端に糸を繰り出すボビンをつけた円盤がついています。
糸で人形をつる場合、三点で人形を支えると安定するので、ボビンは三つついています。
ボビンに付いているツマミを緩めると、ボビンがよく回り糸を繰り出しやすくなります。アニメーション中はツマミを締め、糸が余分に繰り出されないようにします。
ステン寄り1

寄り3
ボビンの位置も調整することができます。
dwarf_01_X1_0166裏側から見た写真。


コの字状の金具をアルミ棒やたる木に引っかけて使います。
アジャスターで幅も調整できます。
dwarf_01_X1_0167寄り6

糸はごく細いタングステン線や、釣糸などが使われます。
dwarf_01_X1_0147

セッティング例



turigu
センチュリーなどで固定した左右2本の角棒(垂木・アルミ角棒が使われます)に、もう一本角棒をかけ、そこに吊り具をひっかけます。
ボビンから出した糸で人形を支え、
ラックで上下動、本体を滑らせて左右移動、角棒を滑らせて手前・奥の移動を行います。

dwarf_01_X1_0163
この吊り具も、職人さんの手作りです。
ドワーフの発注で小前隆さんに作っていただいたものだそうです。

この吊り具の特長は、ラック部分がステンレス製であること。ふつうは真鍮で作ることが多いですが、ステンレス製のラックは真鍮製よりも丈夫で精度が高いのが良いそうです。
ラック以外の他の部品はほぼ真鍮製で、クロムメッキをかけてあります。
大きさも60cmほどと、大きいので上下動のストロークが大きく取れます。

dwarf_01_X1_0147_2 引き3
ラックの先端に付いた金具を回転させて、
ボビン付き円盤を吊り下げる位置を調節することができます。
円盤の中心が垂木の下にくるようにすると、重心をとれて安定します。

寄り2 引き2
この金属の円盤状の構造は、本体を回転させるための機構です。
両サイドのツマミを緩めると回転し、
極端な話、これくらい垂木が斜めになっていても、水平に設置することができるのです。

吊り具が欲しい!そんな時は

吊り具も一般的には売られていないので自作するしかありません。
フィルム撮影からデジタル撮影に移行して、合成で突きだしの消しこみができるようになってから、吊りの使用頻度は以前に比べて少なくなったそうです。
しかし、突き出しで支えきれない重さの人形を支えるときや、
突き出しを入れられないセッティングの時には重宝するので、持っていたい道具ではあります。

    
コマ撮りのつくり方 2017年6月22日

メディア工作ワークブック

パンタグラフさんがまたしてもすごい本が出されました!「メディア工作ワークブック」です。工作からアニメーションについて幅広く書かれた本です。

mediakousaku

メディア工作ワークブックのCM動画

内容と感想

この本、ほんとうにすごいですよ。「まわる」「ひかる」「うごく」をテーマに色々なものの作り方がわかりやすく紹介されています。「まわる」では主にモーターを使った工作。そしてスリットアニメーションやゾートロープなどアニメーションに関連する工作も紹介されています。「ひかる」ではLEDなどの照明を使った工作がテーマです。

工作道具といった基本的なことから、モーターの回転数や電圧の用語説明があったり、LEDなど照明器具の配線の直列や並列の違いや、電気抵抗などちょっと専門的な用語まで、初めて工作する人に向けてとても親切な語り口調で説明してくれています。これ一冊で夏休みの工作宿題が何年分でも作れそう。

「うごく」編はコマ撮りアニメーションについてです。カメラ機材から撮影方法・パソコンでの編集・合成など親切丁寧に書かれています。パンタグラフさんのツイートで少し見れますが、アニメーションの原理からボールの投げた軌跡や物の倒れ方のリアルな描き方などの動かし方のコツや演出方法などもたくさん書かれています。

何と言ってもそれぞれのアニメーションの例がどれも素敵でワクワクします。いくつか下で紹介します(全部YouTubeでみれます)

作例

ブロック崩しアニメーション

置き換えアニメーション

積み木増殖アニメーション

型抜き粘土アニメーション

過去作品

本書の後半は「実践編」と題してパンタグラフさんの過去の作品がたくさん紹介されていて、そこでもどうやってアイデアを出して、制作物にどう落とし込んでいったのか、ものづくりのテクニックが説明されているだけでなく、クライアントワークをどう進めていくか、どう見栄えのよい演出をしていくかなど考え方についても書かれており、興味深い話が盛りだくさんです。どこを読んでも為になること間違いなしです!

その他情報

Amazonで購入できます
中身も数ページ見れます。

パンタグラフさんの美術造形の本「造形工作アイデアノート」もおすすめです。
紹介記事こちら

パンタグラフさんのサイト
ツイッター

    
コマ撮り道具 2017年6月17日

タンク-dwarf編②-【Animator’s tools】

プロのアニメーターさんが使っている道具を見せていただく「アニメーターズツールズ」。
前回に引き続き、アニメーター・峰岸裕和さんの道具を見せて頂きました。

【タンク】

リグ、戦車などとも呼ばれます。
人形に取り付けた突き出し棒を、上下に動かす機材です。

タンクは実はあまり決まった形がありません。
共通する特徴は、ギザギザのついた金属の棒(ラック)と、それにかませるギア部分です。
これで上下動をさせます。
あとは人形の重さと均衡を取るため、重りをのせること(黒くなっているところには鉛の塊などがのせられています)も特徴です。

ベテランのアニメーターさんは、人形の重さやセットの大きさに合わせて様々な大きさのタンクを揃えている方もいらっしゃいます。

①基本的な形と突き出しの繋げ方

黒タンク2台
※静止画はクリックで拡大
黒タンク2台GIF用
真鍮のギアとラック、ラックを押さえる土台部分、
ツマミやL字金具などのパーツを組み合わせて作られています。
両サイドにギアを操作するツマミがあり、左右どちらからでも操作できます。
大きいツマミを回すとラックが上下動し、下の小さいツマミが、上下動を固定するストッパーです。
黒タンク2台正面 黒タンク2台後ろ
重りは鉛のインゴット。
ネジでしっかりと固定されています。
黒タンク2台横2 黒タンク2台横
中心のプレートは、ラック(ギザギザの真鍮棒)がぶれないように押さえる役割があります。
下の写真の黒いタンクは、プレート部分が矢印のような形状をしていますね。
どれだけ上下動したかを目測するのに便利そうです。
黒タンク寄り3黒タンク寄り4
黒いタンクの方はラックの上下に穴が空いており、ここに球体関節を差し込んでイモネジで固定する構造のようです。
黒タンク寄り黒タンク寄り2
うさぎのプレートが特徴的な右側のタンクの方は、
ラックの上に棒状の部分があり、ここに接続用のパーツをはめて
突き出しを繋げます。
タンク分解

②シーンによって、いろいろな大きさを使い分ける

こちらは、ラックが上下動するのではなく、突き出しを固定する部分が上下動する構造です。
大きさもコンパクトで、狭いセットの中でも取り回しが良さそうですね!
重り部分には、合成で消しやすいようにブルーが貼られています。
青タンク3台
青タンク3台正面 青タンク3台後ろ2 青タンク3台横青タンク3台横2青タンク3台後ろ

青タンク寄り2 青タンク寄り1 青タンク寄り9 青タンク寄り8
アルミや真鍮など加工しやすい材や金属パーツを使い、手作りで作られています。
上の写真をみてください。真鍮の小さなハンドルの上に、
真鍮板の途中まで、手で切られたような切れ込みが入っているのがわかりますか?
この切られた部分は、ストッパーの役割を果たします。
ハンドルを回すと左右の真鍮板が閉じていき、ラックを締め付けるという構造です。

下の写真のタンクも、上下は逆になっていますが同じ仕組みで作られています。
青タンク寄り6青タンク寄り5 青タンク寄り4青タンク寄り7

③美しく実用的なデザイン

緑タンク
こちらには緑のテープが貼られていますが、
これはアングル内にタンクが入ってきてしまった時用に貼ったのだと思います。
合成の時にクロマキーで抜くため、青や緑のテープが使われます。
緑タンク正面緑タンク後ろ緑タンク横緑タンク横2
緑タンク寄り 緑タンク寄り2
左側のタンクは、①とほぼ同じ形をしています。
右側のものは、少し変わった形状をしていますね。
この円盤のような構造は、左右に二つ付いたツマミを緩めると、
ラック自体の角度を変えることができるのです。
この構造はアニメーション用の「吊り具」にも使われています。
上下動に限らない動きをしたり、床が水平ではない場合に使えそうです。

そして、もちろんこの構造も手作りです。この加工をするにはフライス盤など専門的な電動工具が不可欠だそうです。
見た目にも美しく実用的な、素晴らしいデザインですね。

④手軽に作れる!?既製品を応用したタンク

こちらはミスミのスライダーステージを使って作られたもの。
ミスミ2台ミスミ寄りミスミ横ミスミ寄り2
ギア部分を真鍮で作るものより、工作の手間が少ないことと、
スライダーの上下動にブレがなく、精度が高いのが特長だそうです。
手作りした部分は、突き出しをつける六角形のパーツと、後ろの重り部分のみ。
ギア部分の工作はハードルが高い…と感じている方は、真似してみてはいかがでしょうか。

タンクが欲しい!そんな時は

タンクは一般的に売られているものではありません
金属工作が得意な方は、今回の写真を参考にしつつ、
ご自分のアイディアを盛り込んで、自作してみるのもいいと思います。

また、コマ撮り用の関節を作っている川村徹雄さんのサイト
タンクの販売もされているようなので、購入してみるのもいいかもしれません。